「どうすれば成績が上がりますか?」 「効率的な勉強法を教えてください」
塾講師として、あるいは教育の現場にいると、毎日のように投げかけられる質問です。世の中には星の数ほどの参考書があふれ、YouTubeを開けば「最短最速の学習法」を説く動画が次々と流れてきます。
しかし、私はあえてここで、身もふたもない「真実」を伝えたいと思います。
学力を上げるのは、実はめちゃくちゃ簡単です。
特殊な才能も、高価な教材も、最新の脳科学も、本来は必要ありません。やるべきことは、たった二つだけ。
「問題を解く」こと、そして「直しをちゃんとする」こと。
これだけです。これ以外にありません。 「なんだ、そんなことか」と拍子抜けしましたか? あるいは「それができないから苦労しているんだ」と憤りを感じましたか?
でも、これが真理なのです。今回は、なぜこのシンプルな法則が最強なのか、そしてなぜ多くの人がこの「簡単なこと」でつまずいてしまうのかを徹底的に解剖していきます。
勉強とダイエットの意外な共通点
「勉強は簡単だ」と言うと驚かれますが、これを「ダイエット」に置き換えてみると、誰もが納得します。
ダイエットを成功させる原理原則は、いつの時代も、どの国でも同じです。 「摂取カロリーを減らし、消費カロリーを増やす」。つまり、食べる量を減らして、運動する。これだけです。
世の中には「糖質制限」「リンゴダイエット」「朝バナナ」「最新のEMSマシン」など、魅力的なキャッチコピーが躍っています。しかし、どんなに流行のメソッドを取り入れたところで、結局のところ「食べる量を減らして運動する」という原理原則から逃れることはできません。
勉強も、これと全く同じです。 どれほど評判の良い塾に通っても、どれほど分かりやすい授業を受けても、本人が「問題を解き、間違えたところを直す」というプロセスを通らない限り、学力という筋肉がつくことはありません。
いろいろな勉強法が流行りますが、結論はすべて一緒。 「自分で解き、自分の弱点を修正する」 このサイクルを回した量に、成績は正比例します。
なぜ「簡単」なのに、結果が出ないのか?
原理原則はシンプルです。しかし、これが「簡単ではない」こともまた事実です。 なぜでしょうか?
それは、多くの人が「勉強をやっているつもり」になって、「勉強のフリ」をしてしまっているからです。ダイエットに例えるなら、「ヘルシーなサラダを食べているけれど、その上に高カロリーなドレッシングをドバドバかけている」ような状態です。
自分では頑張っているつもりなのに、なぜか体重が変わらない。勉強も同じで、机に向かっている時間は長いのに、なぜかテストの点数が上がらない。
その原因の多くは、学習の「直し」の質にあります。 ここでは、学力の成長を劇的に遅くさせてしまう、典型的な「ダメな直し」の例を二つ挙げましょう。
1. 「赤ペンなぞり教」の罠
最も多いのが、「答えを赤で書くことで直しをしたことにしている」ケースです。
数学の問題を間違えた。解答を見て、赤ペンで正解の数字や式を書き写す。そして、次の問題へ行く。 これは「直し」ではありません。ただの「写経」です。
赤ペンで答えを書いているとき、脳はほとんど動いていません。「視覚情報を右手に伝達して紙に再現する」という作業をしているだけで、「なぜその答えになるのか」「自分の考えのどこが間違っていたのか」という思考のプロセスが完全に欠落しています。
「赤で書いたから、次はできるはず」という思い込みは、ダイエット中に「サプリを飲んだから、ケーキを食べても大丈夫」と考えるのと似ています。自分を安心させるための儀式であって、学力を上げるための訓練ではないのです。
2. 「汚すぎる字」が思考を殺す
もう一つの致命的な例は、「字が雑すぎて、自分の思考の様子を後から辿れない」ケースです。
計算用紙やノートが、自分でも判別不能な数字や記号で埋め尽くされている。一見すると「猛烈に勉強している」ように見えるかもしれませんが、これは非常に危険です。
学力とは、論理の積み重ねです。「AだからBになる。BだからCになる」というプロセスを一つずつ踏んでいく作業です。字が雑な人は、この「足跡」を自分で消しながら歩いているようなものです。
間違えたときに「どこで間違えたか」を検証できない。これは、迷い込んだ森の中で地図を捨ててしまうのと同じです。 思考が整理されていないから字が乱れるのか、字が乱れるから思考が整理されないのか。おそらくその両方ですが、字が雑なまま学習を続けても、成長のスピードは上がりません。それは、穴の空いたバケツで水を汲み続けるような、非効率な作業になってしまうからです。
「やったつもり」を卒業するために
もし、あなたが「こんなにやっているのに成績が上がらない」と悩んでいるのなら、まずは自分の「直しの姿」を鏡に映すように客観的に見てください。
- 答えを丸写しして満足していませんか?
- 自分の書いた字を、10分後の自分がスラスラ読めますか?
これらは些細なことのように見えて、学力の土台を支える決定的な要素です。 ダイエットで「今日食べたものをすべて記録する」ことが成功への第一歩であるように、学習においても「自分の思考のプロセスを正確に記録し、修正する」ことが不可欠なのです。
「問題を解く、直しをちゃんとする」。 この当たり前すぎることを、徹底的に、かつ愚直に繰り返す。 それが、最短ルートで、かつ唯一の学力を上げる方法です。
では、具体的に「ちゃんとした直し」とはどういうものなのか? 分からない問題にぶつかったとき、どうやって自分の「伸び代」を見極めればいいのか?
次回は、学習の効率を劇的に変える「○・△・×の仕分け術」と、「戦略的な諦め」についてお話しします。

