書店で目を引く「5科目まとめて復習」「1回わずか10分」という甘い響き。一見、効率的に学力を上げられそうなこの教材ですが、現場で多くの生徒を見てきた塾講師の視点から言わせていただくと、評価は厳しいものになります。
今回は、この教材の正体を10の項目で徹底解剖します。
1. 総論(結論)
手軽そうに見えるが、現役生の学力向上には「×(お勧めしない)」。 結論から言うと、この1冊で中学3年分の5科目を網羅しようとするのは無理があります。「買っただけで満足して終わる」可能性が極めて高く、実戦的な学力はつきにくい教材です。
2. 教材名
3. 価格の適切さ
- 748円(税込)
- 判定:非常に良い(グッド)。
- 5科目入ってこの価格は驚異的です。後述する「紙の質」を考えても、コストパフォーマンス自体は非常に高いと言えます。
4. 紙の質
- 判定:最高レベル。
- 受験研究社のドリル全般に言えることですが、紙の質が本当に素晴らしいです。ペン滑りが良く、消しゴムで消しても跡が残りにくい。A5サイズというコンパクトさも相まって、物理的な「勉強のしやすさ」はトップクラスです。
5. 【核心】問題・解説の質
- 判定:不十分(問題は基礎的だが、量が不十分)(解説は要点まとめのみ)。
- 紙面の制約上、問題・解説は「エッセンスの羅列」に留まっています。解説では、なぜそうなるのかというプロセス(論理)が省かれているため、すでに理解している人が「確認」するのには良いですが、わからない人が「理解」するのは不可能です。
6. ターゲット層(向き・不向き)
- 向いている子: 学力中間層で、すでに全範囲の基礎が頭に入っており、忘れていることがないか「サクッと」確認したい子。
- 向かない子:
- 上位層: 内容が簡単すぎて時間の無駄になります。
- 低学力層: 要点まとめの意味がわからず、結局何も身につきません。
7. 保護者の関与が必要か否か
- 判定:必須(だが、かなりきつい)。
- どうしてこうなるか、わからない問題があったとき、5科目が横断的に出てくるため、質問された親御さんには「全科目、全学年の広範な知識」が求められます。解説が薄いため、親が講師レベルの補足説明をしてあげる必要がありますが、正直「普通の保護者様」にはハードルが高すぎます。
8. 使う上での特記事項(いつ、どう使うか)
- 唯一の活用シーン: 高校入試が終わって卒業を待つ時期に、中学の知識を「教養」としてサッと見直したい時。
- リアルな懸念: しかし、高校が決まって解放感いっぱいの時期に、誰がこのドリルを開くでしょうか? その点を考えると、活用時期も限定的です。
9. 塾講師ならではの視点
- 「腰の重い子」へのきっかけにはなるが、単品版(後述)を推奨。
- A5サイズで「10分で終わる」という心理的ハードルの低さは、勉強嫌いな子が机に向かう「きっかけ」としては優秀です。
- プロのアドバイス: もしこのシリーズを買うなら、この「5科合体版」ではなく、同シリーズの「中2数学」や「英単語」「歴史」といった「単品企画商品」を選んでください。単品版はターゲットが絞られており、非常にクオリティが高いです。
10. まとめ
「5科目が1冊で10分」というコンセプトは魅力的ですが、実際の学習効果は薄いと言わざるを得ません。 勉強のスタートアップとして「手軽さ」を求めるならアリですが、本当の学力をつけたいなら、各科目に特化したドリルを選び、着実に「〇・△・×」の仕分け作業をすることをお勧めします。
「安くて手軽」の裏にあるリスクを見極めましょう。

